スワイプはタッチに勝るのか、Clearを触った

 最近話題の「Clear」で遊んでみた。知らないひとのために簡単に説明すると、Clearとは、シンプルで心地よいUIを積んだTODOリストアプリである。お値段たったの85円。

 Clearの設計思想については、WIRED.jp 一夜にして世界中を席巻したiPhoneアプリ「Clear」の裏側 で明確に語られている。端的にまとめるなら、「タッチスクリーンとボタンUIは相性が悪い」ということだ。

 僕はボタンに対してここまで批判的にはなれないけれど、たしかに、タッチスクリーンのボタンは、リアルなボタンに比べて操作性が悪い。ボタンに触れたかどうかは、ディスプレイを通してしか分からないからだ。だから、フリック入力でブラインドタッチをすることは難しい。

 iPhoneで古典的なゲームを遊んでいるとき、十字ボタンがいつの間にか指の位置からずれていることがよくある。人間の目は常にボタンを見ているわけではないし、画面はしばしば指で隠れる。そんなとき、インタラクションに大きな断絶ができてしまう。

 Clearでは、主要な操作はスワイプだけでできる。Clearを見ていると、この作者は本当にスワイプが大好きなんだなあと思う。慣性のついたスワイプには、不思議な心地よさがあって、これを発明したからiPhoneはこんなに普及したのではないかと思われるくらいだ。スワイプでユーザがフィードバックを見失うことは少ない。画面内の大きな領域が指と一緒にスクロールするからだ。フィードバックの分かりやすさからいえば、スワイプはボタンよりすぐれている。

 でも、多くの人は気付いていると思うけれど、全てのボタンがスワイプで置き換えられるわけではない。例えば状態遷移を伴うアプリ。上下、または左右にのみスワイプできるアプリはよく見るけれど、3つ以上の遷移を表現したかったらどうしたらいいんだろう? UIのレベルの全く異なる階層に移動するときは? モードレスUIは万能ではない。

 それに、Clearは少しズルをしている。スワイプで動作が完了したとき、小気味よい効果音を鳴らしている。音を鳴らしてもいいのなら、ボタンだって結構楽しいよ。だけど、外出先、電車の中とかで音を鳴らすわけにはいかないだろう。Clearはそこをデザインとして割り切っているから、ああいう戦略が取れるだけだ。

 だから、ClearのUIが楽しいのは認めるけれど、それがスタンダードになることはないだろうな、という当たり前の結論に至った。結局、ボタンがうまく行っていないのは、視線誘導の問題に過ぎないのではないか。