砂と吹雪とスカーフ



風ノ旅ビト」の楽しいところといえば、なんといっても砂ですよね。いや、世間的にはあのふんわりスカーフの方が人気が高いというのは知っていますけれども、あえて僕は砂を推したい。なぜなら、砂こそが、前作「Flowery」と比較して圧倒的にすぐれているところだからです。

 

「Flowery」は花びらになって宙を舞うゲームでした。この操作感は心地よくて、プレイするだけでスキになってしまう。花びらの浮遊感は「風ノ旅ビト」でもスカーフに触れたときの動きとして受け継がれています。

 一方、「風ノ旅ビト」では、あまり心地よくない動きも追加されました。それが「砂」と「吹雪」です。これらがある場所では、プレイヤーの動きは鈍くなるし、吹雪に至っては主人公を吹き飛ばしてしまいます。

「Flowery」ではある意味万能だった自然というモノが、「風ノ旅ビト」では、ときに障壁としてプレイヤーの前に立ちはだかります。どちらがより人間にとってリアルな自然観だと言えますか?

 

「スカーフ」がポジティブな感覚を、「吹雪」がネガティブな感覚を引き起こす素材であるとすれば、「砂」はポジティブとネガティブを、どちらも内包したものであると言えます。平坦な道や上り坂では、砂は確かに邪魔ですが、下り坂を滑り降りるときはスピードが出て楽しい。

 つまり、「風ノ旅ビト」では、3つの質感を対比的に用いることで、自然が持つ複数の側面を端的に描き出しているんです。ふわふわのスカーフ。凍てつく吹雪。どこまで歩いても終わらない砂。夕日に照らされ煌めく砂。

 素材の質感に意味を持たせるなんて、とてもインタラクションらしいやり方ではないですか?

 

 言葉のないゲームにおいて、新たな表現の手法として「質感」を見いだしたこと。さらにそれを使って、より多面的に自然を描写したこと。これが「Flowery」よりも「風ノ旅ビト」が勝るポイントです。

 要するに砂、なんです。