ゲームを発想する原点

今回は、ゲームを考案する上でのアイデアの幹となる部分、コンセプトに着目する。
その中でも特に、ゲーム特有の表現手法のことだけを考えよう。
ストーリーからの発想とか、マーケティングからの発想とか、他のメディアでも可能なアプローチについてはあえて忘れる。

ここで挙げる四つの視点は、僕がゲームをデザインするときに重要視している部分である。
それと同時に、僕が他の人のゲームを鑑賞する上で、重きを置いている部分でもある。

動詞からの発想

ゲームはプレイヤーに特定の行動をさせることのできるメディアである。
よいゲームには、独特な動詞が伴うことが多い。
ICOは手を繋ぐゲーム、MOTHER2は祈るゲーム、ギフトピアは大人になるゲーム、逆転裁判は弁護するゲーム……など、動詞に制作者の意図が込められたゲームは枚挙に暇がない。

これらアート寄りのゲームだけでなく、エンタテインメント性の高いゲームにもこの手法は活用できる
動詞にゲームプレイのユニークな特徴を込めたゲームとしては、マリオのジャンプ、スマブラの吹っ飛ばし、ドアドアのドア、パンチアウトのアッパーカットなどがある。

主人公からの発想

ゲーム世界の中で、プレイアブルキャラクター(PC)は特別な位置を占める
PCはプレイヤーの一部であり、画面に常に登場しているキャラクターでもある。

PCに特別な役割を与えることで、プレイヤーにその感覚を追体験させることができる
例えば、僕は名越稔洋のゲームにおいて、主人公に犯罪者が多いことは重要な意味合いを持っていると考える。

マーケティング面では、主人公が画面にずっと写っているということが重要な意味を持つ
カービィベヨネッタを見れば、それらのゲームがどういったユーザをターゲットにしているか一目で理解できる。

僕の制作したゲームの中では、「宇宙船地球号」の主人公に強い意味づけがある。

経済構造からの発想

ゲームでは独自の経済を構築することができる。
そのため、普通は価値のないものにプラスの価値を持たせたり、マイナスの価値を持たせたりといったことが可能になる。
プレイヤーはゲームを体験していく中で、その価値を自然に学習する。

古典的な例では、モノポリーは土地独占の社会的デメリットを学ばせるために作られたゲームである。
僕の制作したゲームの中では、「リアル大学生」が比較的このアプローチに近い。

環境からの発想

ゲームは世界観を表現することに長けたメディアである。
独自のルールに基づく世界を構築し、提示することができる。
この環境の解釈はしばしばプレイヤーに丸投げされる

例えば、GTAの世界では犯罪が許されていることに最大の特徴がある。
エレクトロプランクトンの世界では、全てのものは音に連動している。
これらはそれぞれ現実世界の誇張であったり、空想の表現であったりする。

この観点からゲームデザインを分析すると、飯田和敏が一歩ぬきんでているというのが個人的な見解である。
例えば「巨人のドシン」では主人公は正義の巨人にも悪の巨人にも簡単になることができ、それによって島の住人の行動がどう変化するのか、簡単に観察することができる。

僕の制作したゲームの中では、「誕生」がこれに最も近いアプローチであると思う。