自主制作を成功させるために何ができる?

僕の大学生としての時間はもうすぐ終わる。
振り返ってみれば、この4年間のほとんどをゲーム制作に費やしてきた。
いくつかのプロジェクトではリーダーを演じることもあった。
そして、学生だけのチームを回すのには、社会人のそれ以上に難しい点がいくつかあることに気付いた。

まず、学生は個人のやる気に頼らざるをえない。
次に、学生は時間を縛ることができない。
第三に、学生はプロジェクトを通じて成長しなければならない。

やる気について。
学生の自主制作では、基本的には報酬は出ない。だから、作業するかどうかはメンバー自身のモチベーションに左右される。
一方で、やる気というものは、アイディア出しの段階でピークに達し、その後は右肩下がりになるものである。
僕が学生時代に体験したプロジェクトの中には、9割以上完成しているのにお蔵入りになるものもあった。
こうした問題に対処するためには、仕様の一部を切り捨てても骨格が崩れないように設計しておかなければならない。定期的に開発チームのやる気を引き出すようなイベントを仕込まなければならない。

時間について。
多くのプロジェクト管理手法は(僕自身はスクラムを参照することが多かったが)、チームメンバーが毎日顔を合わせることを前提としている。
しかし、毎日学校に来る学生などいないので、うまくアレンジして用いる必要がある。
人によっては、バイトをしていたり、複数のサークルを掛け持ちしていたり、頻繁に帰省したりする。
常にケースバイケースの対応が求められる。

成長について。
やはり学生が自主制作する最大の動機は就活だ。
制作を通じて自分の能力を高められるし、作品が完成すれば成長した能力の証明にもなる。
しかし、うまく成長するには、現状の能力+αの課題を設定しなければならない。
αがどのくらいの大きさになるか、いつも正確に予測できるわけではない。

これら3点を要約すると、学生を信用するべきではないという話になる。
しかし、自分だけしか信用できない状況で、果たしていいものが作れるのだろうか?
チームメイトがいなくても成り立つような企画を立てることは可能だが、保守的にならざるをえない。
αが一人分しかないからだ。
理想的には、プロジェクトに関わった全員が成長しなければならない。αが人数分そろってはじめてチームは前進する。

リーダーには二種類のタイプがいる。
最初に人を集めて、そこからアイディアを引き出していく、いわば民主的なリーダーか。
あるいは、最初に自分のアイディアを出し、それを膨らませるために人を集める独裁的なリーダーか。
一見すると、民主的なやり方の方が、やる気を高く保てるような気がする。
しかし、経験的には、やる気には個人差があって、その影響に比べればリーダーの違いは僅かである。

だから、最初からやる気のなくならない少数精鋭をベースに、企画を立てるべきだという結論に至る。
ゲーム制作で言えばプレイアブルなプロトタイプを作るまでのメンバーだけが、本質的なメンバーだ。
プロジェクトの序盤に関わるということは、自分で成長の範囲をコントロールできるということだ。
それは、制作の意義そのものの大きさでもある。

どんな精鋭とチームを組むかが問題だ。
信頼できる人間でなければならない。
そして信頼というのは、結局の所、何度か一緒にものづくりをしてやっと分かることだ。
とにかく手を動かさなければならない。