マキネーションツールを用いた「ぷよぷよ」の分析

 「マキネーション」はゲームのシステムを記述するための図像言語である。詳しい文法については、公式Wikiまたはゲームメカニクス おもしろくするためのゲームデザイン を参考にして欲しい。
 今日は実際に有名なゲーム「ぷよぷよ」のゲームデザインを分析して、何か有益なパターンが得られないか挑戦する。

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 これは「ぷよぷよ通」のマキネーション図である。赤は普通のぷよ、黒はおじゃまぷよを表している。△で発生したぷよはpuyo stackに溜められ、発火のタイミングで相手側のおじゃまぷよに変換される。これは一旦ojamapuyoに蓄積されるが、時間が経つとpuyo stackに移動する(おじゃまぷよが降ってくる)。
 対戦ゲームとしての特徴を抽出するため、細かいパラメータの増減などは省略した。

 大きな構造は「軍拡競争」に似ている。違うのは、ぷよの連鎖が「攻撃」「防御」「体力の回復(詰みぷよの消化)」の三つを同時に引き起こす、非常に強力な手段になっているという点である。
 この大胆な割り切りのおかげで、ぷよぷよはそれほど複雑な戦略を要求されるゲームにはなっていない。
 通常の軍拡競争と比べて、体力に対する攻撃力の割合が著しく高いため、うまくやれば相手を一撃で殺すことができる。
 そのため、ぷよぷよの上級者同士の争いでは発火のタイミングによって決着がつくことが多い。

 次に「ぷよぷよフィーバー」のマキネーション図を示す。

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 ぷよぷよフィーバーではおじゃまぷよを消去するときにポイントが溜まり、一定数溜めるとフィーバーモードというパワーアップ状態に突入する。
 二人分を記述にはシステムが複雑すぎたので、ここでは単に消したおじゃまぷよが一定時間遅れて相手のおじゃまぷよに変換されることにした。

 注目するべきは、図中央におじゃまぷよのループが完成したことにある。
 Player Aの生成したお邪魔ぷよはPlayer Bの側へ送られる。Player Bはそれを相殺しようと努力した結果、フィーバーモードに入り、Player Aの側へおじゃまぷよを送る。対して、Player Aもまたフィーバーモードに突入する。
 「ぷよぷよフィーバー」では、序盤に決着がつかなかった場合、双方が交互にフィーバーモードに入る展開になることが多い。
 このループは、そういう攻防の波がおじゃまぷよの移動によって引き起こされることを示している。

 この状況を、より単純化したモデルで示せないかと考えた。
 目指すのは、二者の間で攻防の波が揺れ動くようなゲームだ。
 マキネーションツールによる実験の結果、以下のような図では蓄積ダメージがうまく交互に巡回することが分かった。

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 どうやら蓄積ダメージと転送量の間の比例関係が重要で、そこを定数にしてしまうと途端に攻防の波が発生しなくなる。
 ぷよぷよフィーバーの場合は、この比例関係は主に人為的理由(プレイヤーの戦略の変更)によってもたらされるが、フィーバーモードの制限時間の長さもこのループの形成に一役買っている。